ぐうたびTOP > 特集一覧  > 春の阿寒湖温泉でアイヌ文化に触れる旅  > 新作人形劇からイオマンテの火まつり、古式舞踊まで 上演作品の見どころ・楽しみ方



(社)北海道アイヌ協会理事で阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事を務める秋辺日出男氏に、シアターのオープンに合わせ制作され、自身も演出助手を務めた新作人形劇「ふんだりけったりクマ神さま」をはじめとした上演作品について、見どころ・楽しみ方を伺いました。
■秋辺日出男氏
阿寒湖で生まれ、子供のころからアイヌ文化に触れて育つ。地元アイヌ主催によるユーカラ劇に出会いました。 以来ぞっこんアイヌとして生きておられます。 現在は、(社)北海道アイヌ協会理事、世界先住民族ネットワークAINU 事務局長、 阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事の職を務めている。
     




神と人間の深い関わりを人形劇の形でユーモラスに描いた舞台

金成マツさんという方が記された民話(ウエペケレ)を基にした人形劇です。

山を治める神様であるクマ神さまは、毎年秋になると、奥さんを喜ばそうと海に下って鮭を獲っていました。その年もいつものように、鮭を獲って帰路に。狩に慣れたクマ神様の収穫は大量で栄養の行き届いたクマ神さまは太り気味。いつも小川を渡る時に踏む石が心もとなく、水に浸かって渡ることにしました。

ずぶ濡れで困っているところに現れた美女二人に誘われてクマ神さまは家まで連れて行かれました。囲炉裏にあたりクマの毛皮を脱ぐと、クマ神さまは人間と同じ姿になり、飲めや歌えやで数日を過ごすことになります。そして、いよいよ帰らねばとなって気が付くといつの間にかその家はなくなり、獲ってきた鮭もきつねやからすに食われて跡形もありません。実は、毎年小川を渡るために踏んづけていた石は人間が大切に使ってきた石で、神さまが宿っていたのです。その神さまたちが、いい気になっているクマ神さまを懲らしめるためにしかけた罠だったのです。

その後、人間の矢に射られて殺されたクマ神さまですが、人間の村で「天の国へ魂を送り返す儀式」が盛大に営まれることに。やがて天に昇り、神の国である家に戻ったクマ神さまは、歓待のわりに僅かだと思っていた土産物が、実は何倍もの鮭やだんごに変わって既に家に届いていることを奥さんから知らされます。そこで、クマ神さまは、欲を張って獲物を狙うばかりだったことを反省。人間の元も訪れ、上手につきあうことが大切なんだということを知ることになるというお話。神と人間の深い関わりを人形劇の形でユーモラスに描いた舞台になっています。



お互いに感謝しあう心があれば、
自然を汚染したり無駄に戦い合うようなこともなかったはず

アイヌ民族の心の底に流れている、神と人間の深い交流ということですね。毒矢にをあてて殺すという行為は一見残酷ですが、実は人間の神への働きかけなのです。そしてクマ神さまは、それに応えられ、承諾をして村を訪れることになります。人間の招きを受け入れたわけです。

人間が客人として神を迎え、自ら矢に当たるという形で神さまが人間の元を訪れる。アイヌ民族における神と人間の関係性の素晴らしさを象徴する話だと思います。

人間がいるからこそ、神さまはいい思いができるし、神さまがいるからこそ人間も助かる。だからこそ、人間は心づくしのもてなしをするんだよ、という教えがこめられているのです。物語に出てくるきつねやたぬきも同じです。お互い様の関係があるということを教えています。このようなお互いに感謝しあう心があれば、自然を汚染したり無駄に戦い合うようなこともなかったはずだという先人の教えを、今の人たちに伝えたいと思うのです。



生身の人間が演じるには難しい。
アニメでは現実離れしすぎてしまう

人形劇化を提案されたのは、アイヌ文化に詳しい札幌大学の本田優子副学長です。先生には、阿寒およびアイヌコタンのアドバイザーのようなことをお願いしています。そこでアイヌシアターイコロを稼動させるにあたって、今後、どのように展開すべきか相談していました。そんな折、札幌の劇団「やまびこ座」がアイヌの民話を素材にした人形劇を演じているのを見て、これこそアイヌシアターイコロにふさわしい舞台だと感じられたそうです。

あらすじを聞かれてもわかる通り、物語は(ある意味)荒唐無稽な展開をします。クマの形をした神が現れ、川を渡り、空を飛んでやがて神の国に戻る。生身の人間が演じるには難しい面が多々あるのです。「ふんだりけったりクマ神さま」以降もアイヌの英雄伝説などを舞台化したいと考えていますが、英雄たちは空を飛び、土にもぐり、水中深くを泳ぎます。それが、人形劇とすることで無理なく可能なものとなるのです。アニメでは現実離れしすぎてしまうでしょう。人形と言っても、ほぼ私達と同じ背丈の大きなものです。先生のご提案を受けて、「やまびこ座」のスタッフに脚本化も含めて全面協力していただき完成したのがこの舞台なのです。

 



人形やその着物、舞台装置、小道具などを作ることができる
工芸作家や刺繍や裁縫の名手が阿寒にたくさんいる

この演目を選び、人形劇とした理由の一つに、地元の人たちの力を存分に利用できると考えたことがあります。人形そのものやその着物、舞台装置、小道具などを作ることができる工芸作家や刺繍や裁縫の名手がたくさんここにはいまして、町ぐるみで参加できると思いました。最初からロングランで上演することを計画していましたから、よそから人を連れてきて、ずっと続けることは不可能です。そこに住む人たちが出演も含めて協力してやれることが不可欠だったのです。

アイヌの物語をアイヌ民族自身で演じるということはとても意義深いことだと思っています。



屋内シアターでありながら利用することができる、
水や火を効果的に使っています

セリフには当然ながら、アイヌ語をふんだんに折り交ぜて演じています。もちろん、初めて耳にしてもわかる範囲で工夫していますが、できるだけ忠実なアイヌ語を入れるようにしています。

阿寒湖アイヌシアターイコロのステージはせり出した半円形となっており、いろいろな角度からお客様に見られることになります。どの方向から見てもわかりやすい演出でなければなりません。また、アイヌの物語では「水」と「火」が大切な意味をもつことになります。屋内シアターでありながら、水や火を実際に利用できる構造としていますから、効果的にこれらを使っています。たぶん、観劇の経験豊富な方でも新鮮な驚きのある舞台になるのではないでしょうか。






男女の出会いを明るく表現することを考えています

これまで、屋外で行われていた「イオマンテの火まつり」のストーリーとは少し変えることを考えています。

これまでは、「どうぞ、阿寒の村に遊びに来てください」と火の女神に招かれ地上に降り立ったフクロウの神が、人間が存分に楽しませて歓待してくれることを喜び、地上を見守る神としてますます頑張らなくてはいけないと感じて、天の国に帰っていくという筋書きでした。そこに儀式や古式舞踊を入れて演じていたのです。

今回は、若い二人の男女が出会って、恋に落ちて様々な苦難を乗り越えて結ばれるという物語になります。それに伴い村の未来がますます明るくなるよ、ということを象徴するストーリー仕立てです。今回は、男女の出会いを明るく表現することを考えています。もちろん、これまで同様「クマの霊送り」の儀式であるイオマンテで踊られる舞踊をおりまぜながら演じられることになります。



水と火の競演ができる魅力

ご覧になる方にとっては、寒くないということが一番のメリットですよね。

人形劇でも申しましたが、アイヌの物語や儀式において、「火」と「水」はとても大切な意味を持っています。阿寒湖アイヌシアターイコロでは火の使用ができますし、水路が作られていて丸木舟を登場させることもできる。水と火の競演ができるということが演出上たいへんありがたいと思っています。より充実した舞台が作れるのではないでしょうか。おそらく、実際の火を使える劇場というのは世界でも例を見ないのではありませんか。

アイヌでは自然環境をカムイ、神そのものなのだよと考えています。人間は神である自然、カムイに支えられて生きているんだよということを、男女の出会いから結婚までの間の出来事に折り込んでいこうと考えています。

いずれにせよ、今まで屋外で行っていたものとは少し違う「イオマンテの火まつり」となるでしょう。
 今、人類は原発をはじめ、自然環境の破壊などといったことで悩んでますよね。そういったことに警鐘を鳴らすとともに、ヒントを提案できる舞台となるでしょう。



水にキャンドルを浮かべたり少しシックで落ち着いた演出にしたい

今までも、いろんな機会にアイヌの古式舞踊をご紹介してきました。しかし、残念ながら踊りと唄の羅列に終わっていたのではないかと思います。舞踊の間に「はい、この踊りはこういう意味です。これはこういう踊りです」と説明して終わっていたのではないでしょうか。今回、シアターでの古式舞踊は、若手に演出をお願いしているのですが、これまでとは違ったものを考えていると聞いています。

少しシックで落ち着いた演出にしたいということですね。水路を利用して、水にキャンドルを浮かべて幻想的な雰囲気の演出も企画しています。

踊りだけでなく、唄や楽器の良さにも注目して欲しいですね。今回は、主に樺太のアイヌが使っていたトンコリという弦楽器も使います。ムックリやトンコリの音色を生かして子守唄を唄ったり、物思いにふけったりといったシーンも出てくるはずです。そういった静かでもの悲しげな雰囲気も楽しんで欲しい。シアターは音響として5.1チャンネルを採用していますから、音の良さは映画館なみに素晴らしいと思いますよ。

これまで、アイヌ古式舞踊を見たことがあるという方にも新たに楽しんでいただける舞台となることでしょう。

特集トップへ戻る▲ページトップへ

 

2012/4/29(日)にグランドオープンする全332席の屋内劇場。これまで野外で上演していた「イオマンテの火まつり」をはじめ、新作人形劇「ふんだりけったりクマ神さま」、「アイヌ古式舞踊」などを上演する。劇場内は炎が使用でき、水路が流れてアイヌ民族特有の丸木舟が浮かぶなど、アイヌ文化を伝える竹の設備が整っている。



人形劇「ふんだりけったりクマ神さま」
「アイヌ神謡集」で知られる知里幸恵の伯母、金成(かんなり)マツが記録したウエペケレ(民話)が原作。クマの神様が経験する失敗と、そこから得られる教訓をユーモラスに描き、アイヌ民族の世界 観を象徴する「クマ送り儀礼」も登場、アイヌの人々の神様に対する考え方や人間と神様の関わりがよくわかる。


イオマンテの火まつり

アイヌ民族が踊った古式舞踊を、かがり火を囲んだ幻想的な雰囲気の中で、独自の演出によって構成。イオマンテは、アイヌ語で「熊 の霊送り」といい、山で生け捕った小熊を飼育した後、その霊を神の国「天上」に送る儀式。狩猟民族だったアイヌ民族にとって、熊は天上に住まう神が肉 や毛皮をお土産に地上に降りてきた姿であると信じています。


アイヌ古式舞踊
北海道最大級のアイヌ集落「阿寒湖アイヌコタン」では、国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統的な「アイヌ古式舞踊」を鑑賞できる。独特な唄と掛け 声に合わせて、ヒザと手拍子でリズムを取りながら踊る姿は、荘厳で神秘的だ。

その他にもおすすめ!


  • 温泉・露天風呂-北海道の温泉・露天風呂
  • 出張・ビジネス-CITY BUSINESS
  • 高級プレミアム-Premium
  • 日帰りプラン-ONE DAY
  • 目的で探す宿プラン-女子会 出張 グルメ